患者家族からのメッセージ

K君のご家族からの発表(第3回全国大会"ネットでeクラス1年間の軌跡"より)

15歳の夏に発症して9ヶ月の入院治療に耐えて退院したのは翌年の春でした。 何の予兆もなく、突然頭痛に襲われ、気がついた時には病院のベッドの上でしかも体の自由がかなり奪われていました。 多感な年頃の息子にとって非常に受け入れ難い現実でしたが、それでも彼は自分の未来を諦めずに入院中は院内学級で、退院後は塾と独学により高校に合格することが出来ました。 春から憧れの高校生活を目一杯楽しもうと思っていたのに現実は自分の負った後遺障害と向き合う日々だったようです。

まず周りの動きに付いていけない、ものが二重でしかも揺れて見えているので黒板の文字が判りずらい、先生の説明を聞きながらノートを取ることができない、授業中に理解は出来てもそれを記憶することが難しい等頑張っていてもなかなか成績につながらない事や特に顔面に多少のマヒが残ったため言葉が出にくいのでクラスメイトとのコミュニケーションがうまく取れずに孤立してしまうのがとても辛いようでした。 学校では多くの先生方が気にかけて下さり、また学校としても出来るだけの御配慮を下さいました。そう言った意味では非常に過ごしやすい高校生活だと感じていますが、やはり苦楽を分かち合える友達、仲間の存在はとても大切なものだと思います。

息子自身も、積極的に話しかけて行ったり、クラブ活動に参加したりと努力して友達も何人かは出来たようですが、体のこと、病気のことを理解してもらうのはなかなか難しいだろうと思います。もし今、同じ経験をした人たちと出会い話し合うことが出来ればまた一つ乗り越えることが出来るのではないかと思いインターネットでもいろいろ探して見ましたが、サバイバーの人たちが開いているサイトやブログは見つけることはできず、何か方法が無いものかと思案していた頃、エスビューロー様から去年のこの大会の案内を頂きました。 内容を見るとその時のテーマがサバイバーの進学や就職がメインになっているようでしたので、これはと思い私たち夫婦と息子の3人で参加させて頂き、その中でネットでe-クラスの概要を知ることが出来ました。

全国各所に点在して人数も非常に少ないためお互い会って話す機会の少ないサバイバーの人たちをネットで繋いでともに学び、語り合うこのシステムは息子の今一番求めていたものではないかと思い「どうや?」と聞くと、「やる!」と即答でしたのですぐに申込みをしました。

息子は昔、インターネットをしていて何かの原因でパソコンを1台壊したことが有り、それから余りパソコンには触れていなかったので、最初はアクセスするのも一苦労でした。せっかくシステムがパソコンに入ろうとしているのに只管拒否して「繋がらない、繋がらない!」と苛立って弟に八つ当たりしていた事も有りましたが、今では慣れてきたらしくスムーズに扱えるようになり弟にも平和がやってきました。

基本的には活動中私たち親は近付きませんのでどう言う事をしているのか具体的には知らないのですが、時間になるといそいそとパソコンの前に座り、終わるとにこやかに2階から下りてくるのできっと楽しいのだろうなーと思っております。

その様に何人かの人が集まって話し合いや勉強をするホームルームともう一つ有難い取り組みがあります。それは家庭教師です。 離れた所に居ながらネットを通じてマンツーマンで講師の方に勉強を教えて頂ける。これだと少々体調の悪いときでも何とかなりますし、自分のペースで理解していく事ができ勉強自体も楽しくなってくるようで「俺ってやっぱり数学が好きだ!」などと調子の良いことを言っていたりします。私たちはまあ話半分で聞くようにしていますが…。勉強に対する自信を取り戻すきっかけになるのではないかと期待しております。

このネットでeクラスがもっと広く知れ渡り参加人数が増えればまだまだ出来ることが広がって行くように思います。たとえば世代毎のコミュニケーションや保護者同士の意見交換、また今現在闘病中の方へのフォローや励まし等、出来ればいいなーが出来るようになるかもしれない、それはとても素晴らしいことだと思います。

自分の子供が小児がんを患ったとき、「なぜこの子だけが」とか「なぜ私たちだけがこんな目に」と思います、でも入院中同じ境遇の人たちや過去に経験した人たちの話を聞きまた、頑張る子供たちの姿を見るたび自分だけじゃないことを知ります。あの子もこの子も頑張っているんだ、じゃあ自分も!と思えるようになってきます。その知ることによって湧いてくる力、これが前を向くために絶対に必要だと思うのです、ネットでe-クラスの取り組みはその「知ること」に対して大きな力になるのでは無いでしょうか?

私は知ることによって力をもらい前を向けた一人としてこのネットでeクラスの可能性とエスビューロー様の活動に期待をし微力ながら応援、協力してまいりたいと思っております。

誠に稚拙な文章でお聞き苦しい点も有ったかと思いますが平にご容赦頂きます様お願いいたします。 ご静聴有難うございました。

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Tさんのご家族からのメッセージ

ネットでeクラスで楽しそうに笑いながらパソコンに向かっている娘を見ながら私は普通に食事の支度をし、下の娘に宿題は終わったのか?とごく普通のありふれた会話を交わすといったどこにでもある『ごく普通の生活』の素晴らしさを噛みしめる毎日を過ごしております。これもひとえに病気とまっすぐ向き合い、それに打ち勝った娘と、甘えたい盛りの幼児期に半年以上親戚の家での生活を余儀なくされ、頑張ってくれた妹。治療に携わっていただいた医療スタッフの皆さま、当時の担任であったK先生を含め、学校関係の皆さま。また忘れてならないのが病床の娘の心のケアも含めいつも支えてくれたエスビューローのスタッフの皆さまと、数え上げればきりがないほどのたくさんの方々のおかげだと大変感謝しております。

今から8年前、娘が小学校三年生の時、買い物で出かけたデパートで突然ひざの裏が急に痛み出し、微熱も続いたことから受診した小児科病院にて『リウマチ熱からくる疼痛と熱ですね。薬を飲めば治りますよ』と言われ、聞きなれない病名ながら医者がそういうのだからと薬を飲み続けましたが一向に改善せず、病院を四件廻った揚句最後に受診した総合病院にて白血病と診断されました。
その診断を受けた当初、白血病イコール死!助からない病気と言ったイメージがあり、目の前が真っ暗になり計り知れないショックを受けましたことは今でも記憶に鮮明です。
しかしながら現代の医学は正に日進月歩。日々進歩しておりました。

治療法も私たちが想像していた以上に確立され、国の支援もあり、過去のように完全なる不治の病ではなくなっていました。ですが、白血病は血液のがん。繰り返される抗がん剤の投与、副作用による嘔吐と、激しい口内炎で食事のできない毎日、大人も悲鳴を上げるほどの脊椎注射、ムーンフェイスや髪の毛の抜けおちといった容姿の変貌等、娘の治療はとても過酷なものでした。
8ヵ月の入院治療を終了し、退院後も通院による維持療法で抗がん剤の投与を続けながら、たくさんの方々に支援を頂き、学校へも復帰することができ、治療が終了したのは五年生の終わり頃でした。
敗血症を併発し、危険な時期もありましたが、なんとか退院を迎えることとなり、その前段で大学病院にて病院側の先生、看護師の方、院内学級の先生、地元のクラス担任の先生、保健の先生、私たち保護者と今後の学校生活においてお話がありました。

一番注意しなければならない事は感染でした。維持療法中の白血球の数値は普通の人と変わりなく3000台をキープする薬を投与する予定ですが8ヶ月に及ぶ抗がん剤の治療によってやはり普通の人よりは免疫力が衰えています。インフルエンザ、風邪、おたふく、水疱瘡、などに感染すると重篤化することから風邪がはやりだすと学校は休まなくてはなりません。
人ごみは避けるようにとも言われました・・・学校は人ごみかと心配にもなりながらいろんな思いがありました。
給食は食べても良いとの事でしたが最初のうちは生もの、刺身、納豆などは食べられませんでした。体力がついてくれば体育の授業は受けてもよいとの事でしたが、抗がん剤の治療で日に当る事はすぐに日焼けをするので注意する事、プールには(結膜炎などの心配がある為)入れないとの事でした。

けがをした時などの処置の在り方などなどのお話がありました。また退院後の学校への復帰を担任の先生はとても親身になって考えてくれました。
その時、『犬』の話もしましたが当分は無理なようでした。娘も退院の嬉しさとは裏腹にかなり落胆していました。それと同時に退院し、学校復帰の話も現実味をおびてきたことで、不安も大きくなってきているようでした。体力がかなり衰え容姿も本当に変わり果てた娘です。クラスのみんなは受け入れてくれるのか?
まず初めにした事はクラスのお友達にビデオレターをお渡ししました。クラスのお友達から入院中にいただいた励ましのお手紙、千羽鶴、一人一言の励ましのビデオレター、娘は何度も繰り返し見ていました。

次は、娘からのお返しの番です。有難うの気持ちをいっぱいに込め、頭にバンダナをして照れながら撮影をしました。少しでも学校に登校できやすくする為に私たちも必死でした。
春休みが過ぎて4年生になるクラス編成の時に主人が娘をおぶって校舎に連れて行き、クラスの生徒さんたちが「おかえり」と廊下で迎えてくれたそんな学校復帰初日に家族で感激しました。

娘の病気の事を理解してもらうために生徒の方にも主人が教室でわかりやすく病気について話をしました。保護者様には参観の後の保護者会にて少しお時間をいただき、お話をしました。参加されていない保護者の方にはお手紙を渡してご理解をいただきました。
そんなころエスビューロー様主催の学習支援事業(ピアティーチャー事業)に何度か参加させていただき、楽しい時間を過ごさせていただきました。また、インターネットを使った自宅に居ながらにして学習に参加できるような計画も構想中だと聞き、早くできるといいねといつも娘と話をしていました。

今まで経験したことも、また、考えたこともないような様々な出来事が目まぐるしく過ぎゆく中、二年間の治療は、無事に終了しました。

中学生になり、学習面での遅れ、体力的な面での行動の遅れが目立つために、いじめにつながることもありましたが、想像を絶するような闘病生活を経験してきたことと、自分の後ろには必ず家族がいるんだという気持ちがそれらに打ち勝つ強さを身につけさせました。

今現在ネットでeクラスで学習面や、精神的にも心にゆとりがあるように思います。

闘病中の話からとなりましたが、突然の病気宣告、どなたにもおこりうることかもしれません。多感な時期の子供の病気はとてもつらいです。
インターネットの進歩によって現在闘病中の子供たちもネットでEクラスに参加できると聞きました。外の世界と隔離され、希望をなくしてしまう子供たちもいる中で、大変素晴らしい事だと思います。学習以外にも趣味や好きなこと、行きたいところなど様々な会話や映像を見ることで希望を取り戻せるきっかけにもなり得ます。着手されたエスビューローの皆さまには敬意を表します。

娘が病気になったことで私たちが学んだことはたくさんあります。
まず、親である私達がしっかりしなければならないこと、周りの人たちにきちんと理解してもらうこと、たくさんの事を娘とともに学び、一緒に成長してきたと思います。
まだまだ試行錯誤のこともあるかもしれませんが、このネットでEクラスが病院内ではもちろん、自宅で治療中の方々、またご家族の方への心の支えとなり、きっと子供たちの社会へむけての、復帰に役立つこと間違いありません、同じ経験をした者同士がネットを通じて、話し、学べる。自宅であっても病室であってもほんとうにすばらしい企画だと思っています。 長文になりましたが、これからもよろしくお願いいたします。

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