アンケートにみる復学の現状と問題点

※本サイトは独立行政法人福祉医療機構「長寿・子育て・障害者基金」助成事業により作成しました。
大阪教育大学障害教育講座 平賀健太郎先生

はじめに

大阪教育大学の平賀です。私は元々は病気の子どもへの心の支援に携わっており、現在は大学で病気の子どもへの教育や、心のケアの重要性あるいは必要性について講義を担当し、病気の子ども、あるいはその保護者の、大変さやしんどさなどについて、将来教師を目指している学生に話をしています。今日はアンケートにみる復学の現状と問題点ということで、アンケートの結果を中心にお話させていただきたいと思います。

復学の現状と問題点

多くの小児がんは、治る病気になってきています。特に白血病などは、7割から8割の子どもが完全に治る時代と言われています。ただ、何もしなくても病気が治るという訳ではありません。その治療は本当に、従来にもまして命がけの厳しい入院治療が必要だという風に言われています。そこでこの様な長期にわたる入院治療に伴って、やはり教育面や心理面への影響がすごく心配されはじめてきています。この様な背景を受け、特に教育面で、保護者や院内関係者によって、院内学級が必要ではないかと声があがり、院内学級が増加し始めたということです。院内学級がここまで増えたのはここ10年ぐらいの間じゃないかと思います。

復学で問題となりやすい点

復学の現状と問題点院内学級で教育を受けるためには、転校の手続きが必要になります。具体的に言いますと、制度上は原籍校の学校の生徒ではなくなってしまうわけです。別の学校の生徒になるわけです。まず学籍が移り名簿から名前が削除されてしまいます。別の学校の生徒になるので、原則ロッカーや机の使用は禁止。それからクラスメイトとの絆なども転校することで、先生方の支援がなければ無くなってしまう可能性が十分にあるということです。

ただ小児がんは治る病気になってきており、多くの場合、復学することを前提に考えねばならない時代になっています。そして子どもは復学を目標に治療していることが多いことも事実です。つまり復学により、学籍、ロッカー、クラスメイトとのかかわりが、また原籍校に移ってくる流れになります。当たり前の話ですが、ここをしっかり確認していただきたいと思います。

ひとまず結論を述べれば、復学で問題となりやすい点は主に3 点です。1 つ目は原籍校とのつながりが維持されなくなる点。1 点目と関連して2点目に、入院中の子どもと保護者が、孤立してしまう可能性が十分にあり得るということです。3 点目は、復学後の学校生活に不安があること。この3点が主に復学で問題となりやすい点として挙げられます。

円滑な復学の基本的な条件

円滑な復学に向けて、どのようなことに気をつければよいのかをお話していきたいと思います。

復学の現状と問題点

まず円滑な復学の基本的な条件として私が考えているのは、担任教師との信頼関係がやはり何よりも大事だ思います。アンケートの中の非常に印象的な記述を紹介しますと、保護者からの情報を担任教師が必要に応じて発信するだけで復学はうまくいくと書いてありました。原籍校の担任が保護者同席のもとで、主治医や院内学級の先生に疑問点を質問できれば一番いいが、なかなか機会は多くありません。そこで担任教師が疑問点を保護者に伝え、それを保護者が主治医や院内学級の先生に聞いて、それを担任教師にフィードバックする。そして得られた情報を担任教師が他の先生やクラスメイトに伝えていく、それだけで十分復学はうまくいくことが多い、こう書かれている母親はけっこういましたので、とにかくまず保護者と担任教師がしっかり信頼関係を持った話し合いをすることが必要と思います。

そしてもうひとつの理由として、原籍校側が医療面に関して主治医に連絡をとりたいと思っても、保護者抜きに主治医と連絡をとるのは、個人情報保護の理由で難しいため、保護者抜きの学校と医療関係者の連携も、うまくいかないことが多いです。学校の先生へのインタビューでのお話ですが、保護者と原籍校の先生に信頼関係があれば、しっかりアドバイスをしてくれる保護者だという風に受け止められ、一緒に協力して子どもを見ていこうという気持ちが先生方に強くなっていきます。もし信頼関係がなければ、同じ言葉で話しても、同じ内容を伝えても、それは単に過剰な要求をしてくる保護者だと受け取ってしまうこともあるという学校の先生は結構いました。ですからまずは何よりも保護者と担任教師の信頼関係を築いておくことが必要ではと思います。

最後に

個人的な意見として聞いていただきたいのですが、私はこのアンケートをまとめてみて、治療は病気を治すためにありますが、ただ私は治療というのは目的ではなく手段ではないかという風に感じたのです。目的は、再び当たり前の生活に戻れる事ではないかと思います。そして子どもにとっての1番当たり前の場所は、私は学校だと思っています。そして、子どもの不安や不満が、保護者の不安・不満につながり、子どもへのサポートが保護者へのサポートに間接的につながっている、特に保護者に何か特別なことをしなくても、子どもに対してしっかりサポートがなされていれば、それで保護者は安心することが多いと感じました。そして、そのような復学へのサポートがあれば、過酷な治療を進める上で大きな力になっていくと感じました。

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