『エスビューロー 小児がん喪失ガイドブック』
喪失への多様な適応例を紹介した『小児がん喪失ガイドブック』を作成しました。
柳澤隆昭先生(東京慈恵会医科大学 脳神経外科 小児脳腫瘍部門教授)からメッセージをお寄せいただきました拝啓 お送りくださいました「小児がん喪失ガイドブック」拝読し感銘うけました。まずは本の体裁ー装丁がいいですね。そして構成がいいですね。 まずはエスビューロ設立の契機となるおふたりのご体験からはじまり、第1部の『私たち小児がん喪失家族の心のありよう』、にはいって、最初に葬儀・供養のことが始まるのに、少し驚きそして深く納得いたしました。私は、学生時代に小児がん医療を志すきっかけとなった肝芽腫の子が私の大学卒業直前になくなり、その後にご自宅にご焼香に伺ったことがありました。実習期間は1ヶ月あまりでしたが、気になって毎日お見舞いにいっておりました。まだ、当時は、医師ではなかったのでかえってお伺いすることができたのかもしれませんが、その後も仙台を離れるまでに、毎年ご命日の近くにお伺いしておりました。医師となってからは、最初のころには動揺して泣き出しそうになる医師だったかもしれませんが、かえってご葬儀に伺うようなことには抵抗があり、なくなられた直後のこのようなご様子やお話を直接伺うことはありません。ほとんどのご家族が、ご葬儀をすまされ時間がたってから病院を訪ねてきてくださいますが、そこでお話くださるのは、むしろご自身の動揺よりも、参列してくださった同級生や先生がおっしゃったことなどが多いです。よく理解しているようでどこまで理解しているのかわからない、直後のこと、あるいはその後のことをいろいろ考えました。 その直後からさらに時間とともに、どのような時間が過ぎていくか、様々な側面、そしてアンケートまで第1部しっかり読ませていただきました。 2部ではそこから「いま」を示していただきました。そして4部ではさらに、「新しい価値体系への変革」まで論じていただいております。具体的な例を示していただきながらのお話はすんなりと頭にはいってくる感じがいたします。 引用しておられる神谷美恵子は、私は研究室に前の版の著作集をそろえて並べております。だからということではなく、第4部のほとんどに共感を感じました。 第3部の構成は、皆様であるからこそ実現された企画であり、お話であると感じます。 医療者として、何かご家族の気持ちを少しでもと考えますが、特に主治医としては何とも言いがたい感じをいまの年齢になっても持っております。直接ご家族の悲しみをどうこうすることを考えずに、たとえばご両親が、ご両親としてできる限りの最高のことをお子さんになさったことなどお話するばかりです。それまでのご経過がどのようのものであったにとても、またご両親がその経過に悔いをもたれるようなことがあったとしても、傍らにいて、ご両親として最良のことをなさらなかったことだけはいつも確信し、その事だけは言葉にすることができます。 以上、思いつくままの感想ですが、クライスの中の神戸新聞の記事とあわせて、今回ガイドブックを拝読させていただき、あらためてエスビューローの歴史と皆様に尊敬の念をいただきます。どうぞこれからも多くの方を支えてくださいますように。ありがとうございました。 敬具
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