小児がん学習支援コミュニティの社会的意義を考えるフォーラム

12月3日に小児がん学習支援コミュニティの社会的意義を考えるフォーラムを東京にて開催しました!

13:30〜14:00

学習支援コミュニティ『ネットでeクラス』を開始した背景と経緯

エスビューロー代表 安道照子、 事務局長 長澤正敏
エスビューローでは平成20年と円滑な復学の実現のために「復学ガイダンスビデオ」を作成し、@入院中の原籍校との「つながりの維持」、A退院時の「関係者(医療者、学校、院内学級、保護者)の連携」、B進級や進学時にクラスメイトに「必要な理解と配慮」を求めることの大切さを発信してきた。しかしその後、分かってきたことは復学が円滑に進んだのちにも問題は生じる。
 それは、成長発達への影響、虚弱といった晩期影響から体育の授業をはじめ修学旅行などの学校行事に参加できないことから生じる疎外感、クラスメイトからの孤立という問題である。
 小児がん経験者の学習を身体状況に配慮して支援しながら、こうした孤立化による不安を軽減すべく仲間と一緒のホームルームをあわせて開催できる遠隔集合学習を「ネットでeクラス」を平成21年より開始した。

14:00〜14:30

訪問学級からeクラスへのリレーにより高卒認定資格を取得

兵庫県上野ヶ原特別支援学校  訪問学級教諭 春本里美
 白血病で骨髄移植経験のある竹田君(現在18才)は、数多くの晩期合併症のため小・中学校ではほとんど学校に行けておらず、特別支援学校卒業の時点でも単位不足から高卒の基準を満たしていなかった。 しかし在宅訪問学級により、国語と英語は高1レベル、数学は中3レベルまで進んでいたため、これを引き継いでくれる支援機関を探していたところ、平成22年8月1日のNHK番組の特集で「ネットeクラス」が放送されたのを目撃し、エスビューローに連絡を取った。
 平成23年4月より週3回の個別学習を実施し、8月と11月の試験で国・数・英を含む5科目に合格し、残すは理科2科目、社会1科目となっている。eクラスのメリットは「社会との接点ができたこと」「友達ができ人間関係が広がったこと」「生徒のペースで在宅学習できること」「パソコン技術が習得できること」「自信がつき向上心が保てていること」などである。

14:30〜15:00

自分のペースで学べる!安心して話せる仲間がいる!僕を変えたeクラスとの出会い

四天王寺大学1年 小児脳腫瘍経験者 久米昂佑

 私は中学3年の部活の引退試合の時に突然激しい頭痛に襲われ倒れた。一命は取りとめたものの長い闘病生活では「自分は夢を見ているのだ、夢から覚めたら自分は学生生活に戻っている」と思っていた。しかし現実に戻るにつれ、「なんで自分だけがこんなにも苦しむのか自分はもう何もできなくなった」と思うようになっていった。 そんな時、父から2本目の矢の話を聞いた。1本目は直接の苦痛だが、2本目は自分の感情が作りだす2次的な苦痛で、これが苦しみのもとであるから、1本目の矢を受けても2本目の矢を受けてはならないという仏教の教えだ。これを聞いた私は少し気が楽になった。
 とはいえこれから先の生活のことを考えて不安を感じていたとき主治医の紹介でエスビューローを知り「ネットでeクラス」に参加した。よかったと思う点は「同じ境遇の仲間とたくさん知り合うことができたこと」、物が二重に見えて黒板の文字が見えにくくスローペースな自分にとって「マンツーマンでその人に合わせた学習が可能」ということ。「次回のeクラスにも参加したい」という気持ちがあったから孤独な日常も頑張ろうと思えた。そして、たくさんの仲間たちが集う事が出来ればたくさんの生きる希望が生まれると思う。

15:10〜15:40

実演!「ネットでeクラス」ホームルーム

小児がんサバイバー6名+α
進行役 代表理事 安道照子

 会場でインターネットに接続し、久米君と関西地区や愛知県から5人のサバイバー、それに学習支援の講師役の大阪大学の学生、eクラスに新設した英会話教室の講師役のカリフォルニアのJFK大学院留学生が参加して、代表の安道さんが進行役となり9名でホームルームを実演した。 隔週日曜の午後にいつも参加してくれているメンバーであり小学6年生から大学3年生までと年齢層は幅広い。自己紹介の後、「eクラスの学習支援を受けた感想」について「問題を解くのが遅くても私のペースに先生があわせてくれるのでうれしい」という声。「ホームルームに参加するようになって変わったことは」という質問では、「以前は内向的というか消極的な性格でしたが、皆とコミュニケーションを取ることによって明るく積極的になった気がする」「前は同じ病気の子とか分かってくれる友達とかいなかったし、孤立化という感じだったけれど、入ってからは同じ立場で言い合えるし、自分にも喜びというか楽しいなという感じになった」という声が聞かれた。また会場からはゲストが飛び入り参加し、生徒に質問をするなどして30分の実演を楽しんだ。

15:40〜16:40

パネル・ディスカッション「みんなで考えよう!小児がん学習支援コミュニティの意義」

進行役 事務局長 長澤正敏

 このフォーラムの前までに100人以上の方(医師や院内学級の教師、患児家族など)に「ネットでeクラス」のDVDを見てもらいアンケートを回収した。
教師の意見としては退院後の自宅療養期間の長い生徒や治療や晩期合併症のため授業時間数に制約がある生徒にとってメリットがあるというコメント、同じ境遇の仲間関係がおよぼす心理的な効果を指摘するコメントがある一方で、内輪だけの関係になってしまい、学校や近所に出て行かないことを危惧するコメントがあることを紹介した。

 この点について議論し、人と話をするのが苦手だった生徒がテレビ会議システムでは予想外にうまく話ができた例の報告や段階に応じた社会参画のプログラムができて行けばよい等の意見が会場から出された。
エスビューローの喪失家族としての経験や久米君の「むしろこの場があるから学校のクラスメイトとの関係も改善した」という意見が出され、このようなコミュニティが逃げ場になることを心配するより、発表した春本先生の話にあったように社会との接点として機能するという捉え方が会場の大勢を占めたといえる。
 eクラスの社会的意義としては、院内の特別支援学校分教室と情報や方針を共有しうまく役割分担できればメリットが大きい、という意見や、子どもには教育を受ける権利があること、それが小児がん患児に対する病弱教育の体制において少なからず損なわれている現状があること、そして本システムがその状況の解決に資する可能性があるという観点も会場から示された。
 まとめとして、サバイバーの学習の空白をサポートしうる意義、僕たち私たちと呼べる空間を提供できる意義、身体的制約を超えて在宅就業の道を開く可能性、の3点を当団体として提示した。そしてそれを特別支援教育という公共と私たちのような民間のNPOが連携して社会システムとして機能されることが重要である旨を取りまとめ本会を終了した。


NPO法人 エスビューロー  http://www.es-bureau.org/
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