小児白血病セッション in 関西
2004年8月8日(日)今春オープンしたばかりの大阪大学中之島センターにて、 JACLS(ジャクルス)参加施設の小児科医と共に
白血病と闘う患児・家族の抱える問題の解決策を探りましょう というテーマで、前半は、JACLS(小児白血病研究会)の先生方より各小児白血病の種類毎に、病気についての説明や治療法などをお話していただき、後半は、セッションタイムとして、あらかじめ参加者の皆さんからお寄せいただいた質問をテーマ別に先生方へ投げかけ、その質問についてお答えいただきました。晩期障害や告知、PTSDや復学、教師の対応、学習の遅れ、不妊など日常生活復帰に関連したさまざまな不安や悩みについて、先生方からご意見やアドバイスなどをいただきました。このような先生方が一堂に集まって会を催すという機会は滅多にありませんので、大変貴重な時間と情報を共有していただけたのではないかと思います。 以下はセッション参加者から事前に用意していただいた質問と、それに対し窪田先生から紹介された回答(JACLSホームページhttp://www.jacls.jp/から引用)の抜粋です。 再発Q.再発しやすい時期は治療終了後の半年から一年の間と聞いていますが、それを過ぎると危険は全くないのでしょうか?再発の兆候として症状などはわかるのでしょうか?
A.一般的に骨髄再発の場合は白血病の最初にみられた症状、つまり顔色がわるくなったり、手足に痛みがでてきたり、発熱が長引いたり、出血傾向などがみられます。無症状であっても定期的な採血や骨髄検査で白血病や悪性リンパ腫細胞が見つけられ再発と診断される場合があります。局所再発の場合は、最初に腫瘍が見られた部分が再び腫れてきたり、睾丸再発の場合は思春期でもないのに睾丸が急に大きくなる(特に左右差がある)という症状がほとんどです。中枢神経再発の場合は頭痛、吐き気・嘔吐などに注意をします。いつもの治療の時と違う反応や症状が見られたときには必ず主治医に相談して下さい。
晩期障害Q.将来結婚して生まれてくる子どもには影響はないのですか? Q.治療で抜けた髪の毛はいつ位からはえてくるのですか? Q.長期維持療法によって晩期障害は必ずでるのでしょうか?どのような障害が一番多いのでしょうか? A.晩期障害とは「長期生存例に残存している、疾患自体の影響および外科、放射線、化学療法による直接的、間接的な障害」をすべて含んでいます。
<晩期障害として主なもの>
PTSD (Post-Traumatic Stress Disorder)
Q.治療が終了すると気持ち的にも楽になると思いますが、本人は今後、PTSD(Post-Traumatic Stress Disorder)、PTSS(Post-Traumatic Stress Syndrome)によって精神的に情緒不安定になったりする事があるのですか?もちろん家族や学校側が見守っていても何かのきっかけでおかしくなったりした方はおられますか?
A.PTSDについてはクライス11号で小澤先生の論文から引用させていただき掲載しています。ご参照ください。
学校関係Q.学校へ復学しようと考えていますが、その時に予測される問題とその対応策について教えてください。現在は養護学校から自宅に訪問指導に来て頂いています。 Q.今後生活していく中での注意点、学校での生活のしかたや習い事のできる範囲もおしえてください。 A.すこし冒険と思われるかもしれませんが、主治医と相談しながら、できるだけ早く集団生活に参加させてください。ひとつの目安としては、退院時あるいは外来受診時に、いつから登校(園)して良いかを主治医にたずねてみてください。もちろん、患児が学校にいくときには、越えなければならないハードルがいろいろあります。たとえば、長期入院による学業のおくれ、友だち、先生とのコミュニケーションの断絶、治療の副作用による外観の変化(脱毛、肥満、やせ、満月様顔貌、皮膚の異常など)、筋力の低下、耐久力の低下などがあります。そのために、体育活動や、校外授業への参加は、不可能なこともありますし、学校側から制限されることもあります。いろいろな悪条件のなかで、まず、やってみることは、すこしでも良いから、まず一歩踏み出してみることです。 復学のはじめのころは、たとえば午後までの長時間の授業を続けて受けることは、体力的に無理な場合もあるでしょう。そういうときには、はじめ短時間、時差登校するのも良いでしょう。徐々に体を慣らしていき、体力の回復とともに普通にしていきます。いろいろな意味で、負担を背負わされた患児の復学に際しては、親やまわりの人びとの暖い支えが必要です。環境作りが大切なのです。そのために、学校や園の受持の先生、養護の先生、あるいは責任者の先生に、病状を説明し、病気を理解してもらう必要があります。主治医に、子どもの病名、現在の治療と体の状態、学校生活に参加するときの注意点などを説明して頂いたり、簡潔でわかりやすく文書の形にしてもらい、これを学校の担任の先生に渡すのも、ひとつのやり方でしょう。最後に学校に病名を告げる際には秘密を守ってもらうように申し添えておくことを忘れないようにしましょう。 告知Q.私たちの娘は5歳で発病し、小学校1年生の秋に退院しました。現在小学4年生ですが、元気に過ごしております。まだ自分の病名をはっきりとは知らず、自分はすごい大きな病気をして大変やったとだけは知っているんですが。女の子ですし、今後身体の成長も色々始まる年頃です。告知をどの様に考えたらよいか、またいつ頃、告知したらよいか教えて頂きたいです。
A.従来は、白血病や悪性リンパ腫の患者を看病する家族の最も大きな負担は、本人に病名を知らせないための努力でした。一方、患児は、ふとしたきっかけから自分の病名を知ってしまっても、親や家族が懸命に病気を隠しているので、自分が知っているとは言えないでいました。本当は、家族と病気について気軽に話し合いたかった、慰めてもらいたかったのに黙っていたということが、患児が亡くなったあと見つかった日記などでわかったということもありました。
このようなさまざまな経験の積み重ねから、現在では小児がん専門医や患者の親のなかに、病名を知らせる、または、知らせた方が良いと考える人が増えつつあります。 病名の知らせ方としては、だれが知らせるか?どのように知らせるか?いつ知らせるか?などの問題があります。 知らせる人としては、親が知らせる、親と主治医が同席して知らせる、主治医が知らせるなどの場合があります。どれでも、いちばんやりやすい方法でするのが良いでしょう。 告げる時期についても、いろいろと迷いがあります。本来、子どもといえども、ひとりの人間として考えれば、ものごとをある程度理解し判断できる年齢(6〜7歳?)になれば、自分の病気について、とくに、それが命にかかわるような重大な病気であればなおさら、説明を受けたいと思うことは当然であると考える人もおります。その場合には、診断がついたならば、なるべく早い時期に、病名または、少くともどんな種類の病気であるかを知らせることになります。 また、以下は事前に参加者にアンケートをとった「セッションで聞きたい項目」です。再発についての質問が23件、晩期障害についての質問が21件と大変多く、告知(11件)PTSD(9件)と続いていました。 ![]() |