小児がんサバイバーの学習コミュニティ「ネットでeクラス」を開始して分かったこと

2010年4月15日 長澤正敏(NPO法人エスビューロー事務局長)

小児がんの子どもは全国に約2万人、医学の進歩により20年前に比べるとずいぶんと多くの子どもが治るようになった。今では7~8割の子どもが治っている。半年以上の病院での闘病生活から退院して、子どもたちは学校に戻っていくが、生徒1,000人に対し小児がん闘病経験者は1人の割合でしかないため、校内で同じ病気の仲間に出会うことはめったにない。

こんなことも背景にあり、勉強が遅れたり、心理的にも疎外感をもって孤立したりしやすい小児がんサバイバー(闘病経験者のことを欧米では敬意をこめてこう呼ぶ)の学習コミュニティがつくれないかとの想いから、昨年9月からWebホームルーム「ネットでeクラス」をスタートした。

はじめはパソコンの操作に慣れなかった子どもたちも、次第に自分でログインして入ってこられるようになった。クラスの生徒の年齢はバラバラ。30歳をこえた男性から小学6年生の女の子まで、住所も埼玉県から兵庫県までさまざまな仲間がそろった。共通しているのは小児がんサバイバーであること。

ホームルーム運営側の担当者として、これは使える!と感じたのは、10月の下旬、スタートしてから4回目のHRのときだ。お絵かきしりとりや小学低学年レベルのプリントを題材に楽しいクラス運営がなんとか定着してきた頃だったが、その時はちょっとシリアスに「病気をしたことによる患児の心の成長」をテーマにして、みんなで意見交換を行った。ある小児がん親の会がアンケートの結果をホームページに載せていたので、そのサイトをホワイトボード画面に映し出してみんなで見たのだ。

小児がんサバイバーの子どもたちによる、まさにテレビ会議である。エクセルのファイルとホームページを共有して、それを一緒に見ながら、自分の闘病経験を踏まえて、さまざまな意見が出された。「闘病経験によって、むしろ精神的に強くなったと思う」「弱いものの立場が分かるようになった気がする」「自分のことしか考えてこなかったそれまでのあやまちに気づいた」…などなど。こんな話し合いが、みんな自宅に居ながらできるというのは画期的だ。

3月をもってこのネットでeクラスの第1期は終了した。4月から第2期が始まる。みんなに感想を聞いてみた。「病気してからすべてつまらなかったんですけれど、これがあったから、生きがいができた」と高校2年の男子。「退院とかしてから、同じ病気の人とか身近に付き合うことがなかったのですが、これに参加して、すごいいい経験になっている」と高校1年の女子。

ほかにも「困難にぶつかった時に、あの人たちもがんばっているんだという感覚が浮かんできた」などの感想が聞けた。「いろんな知識が身に着いた。沢山笑えてとても楽しい。毎回、次の授業が待ち遠しく毎回必ず楽しい。」と書いてくれたのは小学6年生の女の子。

少人数ながらも何とか当初の目標である小児がんサバイバーのコミュニティの核はできた。質的には大変満足のいくものに育ちつつある。小児慢性疾患の子どもたちの心理社会的支援のあり方について、ずいぶんとこれまでも研究されてきたが、この「ネットでeクラス」がつくる学習コミュニティが大きな可能性を秘めていることは間違いなさそうだ。