「ネットでeクラス」を始めた経緯とその目的

2010年6月24日 長澤正敏(NPO法人エスビューロー事務局長)

小児がんサバイバー学習コミュニティ「ネットでeクラス」はスタートして10ヶ月が経ちました。今回は、このクラスを始めた経緯やその目的をもう一度ふり返りたいと思います。

◆自宅訪問による学習支援の効率の悪さを克服したい。

 近年、小児がんはその7~8割が治るようになりました。しかしながらその社会復帰は必ずしも順風ではありません。実際、小児がん患児が6カ月以上に及ぶ入院治療を終えて退院し、通院治療(化学療法)を継続しながら復学する際に、勉強についていけない、元のクラスになじめない、といった声がよく聞かれます。この点について何とかサポートすべく平成19年度に公的な助成金を利用して患児宅へ同様の闘病経験のある家庭教師を無償で派遣し復学を支援する事業を行いました。

 単に学習面だけでなく心理的なサポートを期待した事業でしたが、かなりの手ごたえを感じることができました。しかしながら同時に自宅を訪問して実施することの効率の悪さや支援場所の制約(支援してほしいが自宅以外の場所が望ましい)などの課題が見えてきました。

 何とかITを利用して、効率的で、しかも人と人とのふれあいも感じられるような支援手段はないかと模索していたところ、テレビ会議を利用した学習支援のシステム「スクールシティ」に出会いました。

 昨年の8月に当団体が毎年開催している小児がん脳腫瘍全国大会で試行的に実演し、参加者を募集しました。テレビ会議システムという敷居の高さからか、最初は生徒3名でスタートしました。しかし参加者の満足度は大変高く、次第に生徒も増え、ゲスト講師を引き受けてくれるボランティアも現れました。現在では自宅で居ながらにして学習支援を受けられるこのシステムは、復学をフォローし進学を見据えて学習を効率よくサポートできる仕組みであると確信できるようになりました。

◆全国に分散する小児がんの子どもたちにどう対応するか。

 毎年約2,500人が小児がんを発病します。全国の小児がんの子どもの数は約2万人で、これは子ども1000人に対して1人の割合です。ですから患児にとって自分と同じ学校に、自分以外にも小児がんの子どもがいるというケースはほとんどありません。他の希少疾患と同じように小児がんの子どもは全国に分散して存在しています。そしてこの子どもたちへの社会復帰支援がいま求められているのです。

◆子どもたちにとって帰属感のもてるコミュニティが大切。

 つらい治療に耐えせっかく復学したクラスですが、体育の授業では激しい運動を休んだり、掃除当番を代わってもらったりすることも多いことから、次第に孤立する傾向が見られます。心理的にもクラスメイトに対して段々と仲間意識をもつことが難しくなります。同じ闘病経験をしてきた者同士だから分かりあえるような場が必要なのではないでしょうか。この「ネットでeクラス」は、そうしたサバイバーにコミュニティを提供する可能性を秘めたものであると考えています。

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