小児がんサバイバーの心理社会的課題とネットでeクラスによる克服(前編)

2010年7月22日 長澤正敏(NPO法人エスビューロー事務局長)

◆小児がんサバイバーのかかえる身体的および心理・社会的課題の相互関係
個人―外面 横軸を内面と外面、縦軸を個人と集団に分けると右(図表1)のような4つの象限が構成されます。この四象限の枠組みを使って、小児がんサバイバーのかかえる身体的および心理・社会的課題の相互関係について考えてみたいと思います。


①のベクトル(以下、(図表2)のベクトル図を参照)

 個人―外面で示される右上象限において、「小児がん」という診断や苦痛を伴う治療により、心的外傷が生じたり不安や抑うつの状態が生じたりすること(内面―個人への作用)があります。また治療後も感覚運動的な障害(例えば、歩行困難、視覚や聴覚の障害)や抜毛などの劣等感から自分を卑下してしまうということがおこります。(身体的→心理的へ作用)

②のベクトル
個人―外面
 このような心理によって、復学したもののクラスに溶け込めず、疎外感を感じ孤立してしまう。また必要な配慮を求めるべきときに(水泳は休む等)、適切な説明がなされないと、特別扱いとしてクラスメイトから非難され、いじめにつながるということも起こります。(個人の心理→集団心理への影響)

 

③のベクトル
 6ヶ月以上の長期にわたる入院生活において、院内学級を利用することが多いが、その場合に現行では元の学校から転籍(転校)しなければなりません。(病気による長期入院で転校)

④のベクトル
 この転籍が、元のクラスと患児のつながりを希薄化し、加えて担任教諭の意識が低い場合にはクラスメイトとの関係は断絶し、学校に戻ることを励みにして過酷な治療に耐えている患児に厳しい疎外感を与えてしまいます。(転校制度→コミュニティに影響)

⑤のベクトル
 発病前は互いに仲間意識を育んでいたコミュニティであるクラスメイトや友だちとの関係にひずみが入り、帰属感をもてない状態であることが、「対人関係能力」(ガードナーのいう多重知性の内の一つの知能)などの個人―内面の領域での健全な発達を阻害するという悪循環(②、④→⑤)が起こると考えられます。(コミュニティからの疎外→個人の対人関係能力の発達に影響)

 小児がんサバイバーの置かれている状況は、このように負のスパイラルを描いて悪循環に陥る危険性をはらんでいます。そしてこのスパイラルからの脱却のポイントは「実感をもって『私たち』と感じることのできるコミュニティに身を置くこと」にあると考えられます。

 このようなことからサバイバーにとって「実感をもって『私たち』と感じることのできる集団に身を置くこと」が極めて大切であると考えられますが、学校のクラスでそれが実現できない場合どうすればよいのでしょうか?

 次週(後編)に続きます。

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