小児がんサバイバーの心理社会的課題とネットでeクラスによる克服(後編)

2010年7月29日 長澤正敏(NPO法人エスビューロー事務局長)

◆テレビ会議システムを利用した学習コミュニティに期待される効果
 昨年9月より開始したWebホームルーム&個別学習支援『ネットでeクラス』は単なるIT(Information Technology)ではなく、テレビ会議システムとしてコミュニケーション技術の付加されたICT(Information and Communication Technology)を利用した学習コミュニティであることが大きな特徴です。

○「ネットでeクラス」は共通した闘病経験のある仲間というコミュニティを育み、対人関係能力の向上に寄与できる
ネットでeクラス Webホームルーム「ネットでeクラス」は、小児がんサバイバーのための新しい社会システムとして機能することで、地理的にも行動制約的な面からも成立し難い小児がんサバイバーのコミュニティが形成されうる可能性を示唆しました。このことによって既存の学校のクラスでは疎外感をもち、孤立しがちなサバイバーが、「私たち(We)」を実感できる空間ができたことになります。そしてサバイバーが「私たち(We)」を実感できるコミュニティが健全に発達していくことは、取りも直さずその構成員一人ひとりの対人関係能力に良い影響を与えるものと考えられます。(図表3)

 

 参加者のひとりである高校生は「発病後、人と接することがとても怖かったけれど、かなりコミュニケーションがとれるようになってきました。」と語っています。

○「ネットでeクラス(個別学習)」はサバイバーの運動感覚能力を補完し、認知能力に働きかける
ネットでeクラス 「ネットでeクラス(個別学習)」は上記のベクトルとは逆に、多重知性のもう一つ認知能力に働きかけます。歩行難や視聴覚の軽度障害のため、一般塾通いや学校のスクール形式の授業についていくのが困難なサバイバーの感覚運動能力を補完し、新しい個別対応の学習スタイルを提供するのです。


 これは、個別対応の家庭教師でも同様な効果を期待することができるかもしれません。実際、平成19年度には私どもエスビューローでもサバイバーの自宅を訪問し学習支援ボランティアを実施しました。そこから学んだことは「できるだけ効率よく、ひとりでも多くのサバイバーを支援できる仕組みが必要である」ということです。

 ネットでeクラスは「できるだけ効率よく、ひとりでも多くのサバイバーを支援できる仕組み」です。

 現在「ネットでeクラス」では大阪の学生が埼玉県や愛知県のサバイバーに学習支援を実施しています。今後はサバイバーの学生がサバイバーを支援するピア・サポートにも挑戦していきたいと考えています。

 7月30日の小児がん・脳腫瘍全国大会ではホームルームの名場面や個別学習の様子を映像でご覧いただきます。また3人の子どもたち(高校生2人、中学生1人)に登場してもらい体験談を話してもらいます。1年間体験した子どもたちの生の声を是非とも大会でお聞きください。

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